日本人魂


敗戦後、日本人は、日本人魂を封印された。
日本人魂とは何か。
それは恩を感じる心である。恩義を日本人は最も重んじた。
我々は、子供の頃、犬だって三日飼えば恩を忘れない。
お前は何年、この会社の飯を食ってきたのか。何年もこの会社に飯を食べさせていただいた恩を忘れたか。なんて恩知らずの人間だで、我々は通じたのである。

恩を感じる心があれば、お陰様、お世話様、お互いさまと感謝する気が生じる。恩を感じる心がれば、報いを相手に強要する気が起きない。
恩を感じる心を失ったから何でもかんでも報いを求めるようになるのである。
それも「お金」で…。
恩は、それを受ける者も、与える者も見返りを求めない。日本人は、恩を感じる心を基礎として信頼関係を作ってきたのである。
それが日本人の慈愛である。魂であり、本質である。

恩を感じる心があれば、お陰様、お世話様、お互い様と困った時に何も言わなくとも、何も見返りを求めずに助けてくれる。それが義理人情なのである。
だから、恩を強要するのは野暮な事である。

親の恩、師の恩、仲間の恩、国の恩。
この恩によって日本人は、繋がってきた。
むろん、親に反発したり、反抗してはいけないというのではない。そんなことを言っているのではない。ただ、恩は忘れるな。恩知らずになるなと言っているだけである。それ故に、恩着せがましい事は言うなと窘められたのである。恩は、恩を受けた者が感じる事であって強要する事ではない。
この辺が日本人の奥ゆかしいところ。
ただ、日本人は、最後には、これまで世話になった人、世の中、社会に恩返しをするんだよと育てられたのである。
だから世話になった人に対する義理立ては忘れなかった。
今は義理が立たないと言っても意味が分からない。

この恩という言葉は死語になってしまった。日本人の道理の核になる言葉が封印されたのである。

恩があるから感謝も生まれた。恩がなくなれば感謝の意味も廃れる。
住みにくい世の中になったものです。
日本人は、おかげさま、お互いさま、お世話様と挨拶し、縁を大切にしてきた。日本人の根本的な価値観が洗い流されそうとしている。

日本人の根本的な価値観の上に忠義、忠誠が生まれたのである。
そして、忠義、忠誠は、忠実、正直の本となった。日本人にとって忠実、正直は一番大切な徳目の一つである。

また、恩義があって義理と人情が形作られ。筋道がつけられたのである。

これが日本人の道理の根幹を形作ってきた。しかし、日本人の社会から道理も失われた。

日本人は、物事の道理を落語、講談、講釈、浪曲、義太夫、歌舞伎、能とあらゆる芸能を通じて浸透してきた。
道理のわからない者を落語では与太郎といったのである。
今は、道理のわからない与太郎ばかり。

今は、礼節、礼儀作法も失われようとしている。
日本人の世界は美しさを失いつつある。

伝統だ、仕来りだなんて野暮な事。

これらの言葉はすべて否定され。今の日本の生活から姿を消してしまった。
その結果、義理も人情もわからない。筋の通らない事が横行する。恩知らずな世の中になってしまったのである。

その結果、いじめ、虐待、孤独死である。
情けない世界になったものである。
今、日本人魂を取り戻さなければ、永遠に日本人の心は失われてしまうだろう。

お陰様で助かりました。
その節は、お世話になりました。
このご恩は、決して忘れません。
と感謝を表せば、
いえいえ、お互い様です
と答えるのが日本人なのです。



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