老いるとは



母が転んで怪我をした。
幸いニ、三日横になっていたら回復した。
寝たきりの状態にならずに済んだけれどいつまでも母だって達者でいるわけにはいかない。
いつかは、介護生活に入るだろう。

母が元気でいる事に甘えて今は、自分がやりたいことに専念している。
しかし、母を介護しなければならないと決まったらそうも言ってられなくなる。

人生の大半は、子育てに始まって親の介護に終わる。
そう覚悟しておく必要がある。
子育てと介護の時は、人の世話をする。
子供の頃と晩年は人の世話になる。
人の世話になり、人の世話をする。
お互い様である。
それが人生なのである。

高齢者問題は、老いを理解しないとわからない。

高齢者は、
行政からも家族からも見捨てられようとしている人たちだといえる。

行政は、高齢化問題を設備や制度で解決しようとしている。
家族は、高齢者を厄介者扱いする。
しかし、老いとは、人生の問題なのである。
その根底に生きる事の意義が隠されている。

人は遅かれ早かれ老いる。
老いれば人の世話にならざるを得ない。
世話をする人間もそれなりの覚悟が必要である。
だとしたら、老いるとはどういう事かを知らなければ人生の意義などわかりようがない。
多くの人は、いつかはと思いながら老いという現実から目をそらし、見ないように努めている。
しかし、老いは必ず来る。
老いを直視しなければ老いは克服できない。

老いるとはどういうことか。
人は老いによって多くのものを失っていく。
記憶すら失っていくのである。
可能性や希望まで容赦なく老いは奪い去っていく。

人は、老いる。

老いるという事の真の意味を理解しないと、高齢社会に対応する事ができなくなる。

老いに伴って記憶力が低下する。
老いに伴って足腰が弱まる。場合によって歩けなくなる。
老いに伴って視力は低下する。
老いに伴って視野が狭くなる。
老いに伴って耳が悪くなる。
老いに伴って歯が悪くなる。一度失った歯は取り返せない。
老いに伴って筋力が低下し、重いものが持てなくなる。
老いに伴って骨がもろくなる。
老いに伴って頑固になる。
老いに伴って人との付き合いができなくなる。
老いに伴って働けなくなる。
老いに伴って炊事洗濯ができなくなる。
老いに伴って新しい事に挑戦できなくなる。
老いに伴って元気がなくなり、遠出ができなくなる。
老いに伴って動作が遅くなる。
老いに伴って諄くなる。
老いに伴って誰かの介護が必要になる。
老いに伴って誰かの助けが必要になる。
老いに伴って居眠りが多くなる。
老いに伴って孤独になる。
老いに伴って気力がなくなる。
老いに伴って後片付けが億劫になる。
老いるとはそういう事である。

老いると掃除だの後片付けが億劫になり、家の中が片付かなくなって家がゴミ屋敷のようになる。
料理だの洗濯だのができなくなる。
高い階段や段差を越えられなくなる。

歳をとると同時に若い頃には、なんでもなくできた事ができなくなる。
しかし、周囲の人間はそれが理解できない。
以前は当たり前にできた事ができなくなると、周囲の者は、怠けているとか、わざとやっているように思ったりもする。

逆に、何もさせなくなってしまう。
何ができて、何ができなくなったのかを見分ける事が大切となる。
老いには個人差がある。

父は、幸不幸は晩年にあると言っていた。
子供の頃できない事は、成長するにつれてできるようになる可能性がある。
しかし、老いは、それまでできていたことができなくなり、また、成長する可能性が立たれていく。
その失望感、絶望感は大きい。
それを理解しなければ老いの持つ意味は理解できない。
一度失ったものは取り返しがつかないのである。






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