風

　幸せは、思い出の中にしかないのか。
　未来は闇に閉ざされ。
　今は、現実の重さに押し潰されそうだ。
　俺を置いてけぼりにして、時は、無常に流れていく。
　老いは残酷である。
　あらゆる夢を色褪せ。希望を奪いさっていってしまう。
　それでも、振り返りたくはない。
　振り返ったところで何も有りはしない。
　空しくなるだけだ。
　生きているかぎり、未来を信じて。
　夢み続けるのだ。
　この命が続くかぎり。
　例え、過去の幸せに背を向けてでも・・・。

　幸せというのは、幻なのだろうか。
　それとも、嗚呼、幸せだなと感じる一瞬なのだろうか。
　今の幸せを幸せだと感じずに、
　後になって幸せだなと感じても空しいばかりだ。
　振り返ってみると厭な想い出も懐かしく感じるのはなぜだろう。

　人は、何を残せるというのであろう。
　名を残すと言っても名前なんてただの目印、レッテルに過ぎない。
　実績功績と言っても実体は虚しく忘れ去られていってしまう。
　ならば、風になれよ。
　志をもって風になれよ。
　人々の心の中を吹き抜ける風になれよ。

　　　　　　　　

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